受賞者ニュース
藤沼さん三宅さん彦根賞〜構造コンペに“カキ礁のまち”出品
2016年7月1日
東日本大震災の被災地沿岸に巨大な防潮堤の建設が進む。高い「壁」で海を隔てるだけで本当に町が育つのか――。そんな疑問から、藤沼悠生さん(建築都市環境学専攻修士1年・多田脩二研究室)と三宅菜月さん(同・今村創平研究室)の2人が「Oyster Reef‐共に成長するまち‐」を構想し、学生・若手実務者のための第3回構造デザインコンペティション(6月19日、東京都港区芝の建築会館で開催)で発表。審査員特別賞(彦根茂賞)を受賞した。東北沿岸のカキ礁から学んだユニークな構造体だ。
藤沼さんらは震災時、防潮堤の欠片が津波被害を拡大した点に注目。波を止めるだけの「壁」では効果や景観に問題が残り、受け入れたくないという住民もいる。発想を変え津波に負けない建築「まちの一部」として復興を担えないかと考えた。
注目したのはカキ礁。カキ礁は、強い波に流されず海の生物に住み処を提供し、漁礁になる。これを人間スケールにユニット化できれば・・・・・・。
5年経っても復興がはかどらない宮城県雄勝町を具体的計画地に選定。カキ礁に学んだ点を人間生活に置き換え▽暮らしの提供▽直射日光から守る▽津波から守る▽生活用水、排水の確保▽被災後の場所の提供▽非常食などの確保エリア――に沿って、模型化した。
出来上がったプランは、浜辺の地盤に鋼管杭を打ち込み、上にユニットを積む。ユニットの曲面が波への抵抗を減らし、積んだ隙間が水の威力を弱める。各戸は頑丈な扉で海水を締め出す。
集合体を防潮堤エリアと住居・商店街エリアとに分け、ガラス天井から採光。外にいる人々の避難所にもなる。各ユニットと町が呼応し、時間とともに成長していく。
藤沼さんは「時間不足で案を詰め切れていませんが、相方(三宅さん)とぶつかることなく、楽しく取り組めたと思います。結果的に素晴らしい賞を取れてよかった」と喜んだ。