レクチャーシリーズ

2016年度レクチャ―シリーズ〜第4回:北山恒氏「公領域と私領域の間」

2016年10月12日

北山恒氏を千葉工大に迎えてのレクチャーが10月12日に行われた。
このレクチャーで北山さんは、現代のコモンズのありかたについて、人類学的な歴史を踏まえて紹介してくれた。3月に行われたY-GSA最終講義をもとにしたもので、かつ最後に新しいプロジェクトまで絡め、より判りやすいものであった。
それは、エドワードホールがいう個人の身体把握能力からはじまるものである。次第に社会圏が大きくなるにつれて、人が必要とする機能とそれに見合う空間が用意されていく空間の歴史についてである。それによると、生活集団を束ねるために用意されたものがコモンズという考えであり、むしろそれは管理システムとしても機能する。したがって、コモンズは与えられものであってはならない、獲得するものだという。これが北山さんの論旨であった。それは、フーコーのパノプティコンとアーレントの私的領域論を基本においたものである。
北山さんに惹かれるところは、そうした考えが人間主義的なものに陥らないこと。それを実現するための戦略があることだ。そこにジェイコブスとの違いを感じることができる。普段から建築に関わる経済学者や教育者と接し、そのヒントを吸収している。このことに気づかされた。ぼくらには、本から得る知識に加え、そうした情報を嗅ぎ回る必要がありそうだ。学生にはそのメッセージが強かったにちがいない。
後半の対談でぼくと意見が分かれた点がひとつあった。それは、北山さんの徹底的なオブジェクト指向(思考)を否定することである。モノは最終結論的な静的なものではないと思う。つくるプロセスの中にオブジェクトを位置づけることで、北山さんの示す図式的構造、ソフトなインフラを建築に導くこと、も活きるのでないかと思う。とはいえ、北山さんが提案してくれた10人単位が150人までのコミューンに拡張できても、それ以上は建築の力が必要であり、それをどうするかということについては、未だに残された問題である。ぼくらは、これについて考える必要がありそうだ。(遠藤政樹)


北山恒(きたやま・こう)1950年香川県生まれ。76年横浜国立大学建築学科卒業。78年ワークショップを共同主宰。80年横浜国立大学大学院修士課程修了。87年横浜国立大学専任講師。95年同大学助教授。同時にarchitectureWORKSHOP設立。2001年横浜国立大学教授。07年同大学院Y-GSA教授。17年─同大学名誉教授、法政大学教授。