受賞者ニュース
櫻井さん 最優秀賞 卒業設計 防災地区ターザン計画を提案
2018年3月10日
建築学生の卒業設計作を公開審査する場として国内最大級の第16回せんだいデザインリーグ卒業設計日本一決定戦(仙台建築都市学生会議主催)は3月4~11日、仙台市のせんだいメディアテークで開かれ、櫻井友美さん(建築都市環境学科4年、遠藤政樹研究室=写真)の『防災地区ターザン計画―吉阪隆正にみる「スキ」のある建築の研究―』がファイナル(公開審査)進出10選に入った。
「日本一」などの賞は逃したが、同じく全国の学生作品を広く審査する福岡デザインレビュー2018(日本建築家協会九州支部デザインレビュー実行委主催=3月10、11日、福岡市の福岡大60周年記念館ヘリオスホールで開催)では最優秀賞に輝いた。
“ターザン計画”は、合理的な現代の建築空間に、感性の「スキ(隙)」を生み出したいと願うもの。非合理的な関係でいっぱいの人間には効率優先は息が詰まらないか。ル・コルビュジエの弟子で日本にモダニズムを紹介した吉阪隆正(1917~80年)の建築に教えられたという。
作品は東京都谷中を敷地に選んだ。谷中には谷や坂があり、人や猫がおり、ベランダや花壇に「スキ」が残る。しかし近年、防災計画で消防車用の道路拡幅や家の建て替えが求められ「スキ」が失われかねない。
櫻井さんは防災計画と「スキ」の両立を計画。現地で谷中防災センターを利用するおばあちゃんや子どもたちを観察し、ヒアリングを行った結果、家族の会話が減ったり、公園に遊具がないなどの不満が浮かんだ。
そこで、防災センターを充実させる一方、火災・倒壊危険度が高い地域を3つに区分けし、それぞれの一角に一時避難所となる防災タワーを計画。災害時に、周辺住民はタワーに備蓄したプーリー(ターザンを使用する器具)を持ち出し、タワーからターザンロープで谷中防災センターまで倒壊した建物の上を避難する。タワーは各種仕事場を兼ね、おばあちゃんと家族が出会えるように階段をリビングで囲んだ。子どもたちは防災センター内に計画した児童館へターザンを乗りにやってくる。街では年数回のターザンを使った防災訓練が恒例になる……。
福岡デザインレビューでは、ターザンというキャッチーなワードとは異なる、防災にも踏み込んだ提案があることを評価してくれたという。
櫻井さんは「大学外で知らない人たちに伝えることが一番難しい課題でしたが、作品への思いを素直に言うことで理解していただけました。ものをつくる仕事は感動してもらえることが大切で、私の作品が少しでも人の心を動かしたと思うとうれしいです」と語った。