レクチャーシリーズ

2016年度レクチャ―シリーズ〜第1回:槇文彦氏:“建築界のノーベル賞”受賞者

2016年6月8日

建築レクチャー「都市に人の居場所を」
 今年第1回の建築レクチャーシリーズが6月8日、津田沼校舎で開かれ、ヒルサイドテラス(東京・代官山)などの建築作品で知られる槇文彦氏(槇総合計画事務所代表)が「ヒューマンな建築環境の形成を目指して」と題して講演した。
 建築レクチャーシリーズは今年で4年目。4月に創造工学部建築学科がスタートしたのを機に、改めて学生と教員が「建築とは何か」という根源的なテーマと向かい合おうと、日本の建築界を代表する人たちを講演者に招くことにした。
 槇氏は87歳。30歳代から今日まで日本国内はもとより米国や欧州、アジアで作品を作り続け、「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞や日本建築学会賞をはじめ世界中の名だたる賞を数多く受賞している。
 代表的な作品には、国内では本学が毎年、入学式と卒業式を執り行う幕張メッセや東京・青山の商業施設「スパイラル」、東京体育館など。海外では2001年の9・11同時多発テロで崩壊したニューヨークのワールド・トレード・センター跡地に建てられたフォー・ワールド・トレード・センター、MIT(マサチューセッツ工科大)メディアラボ新館などが有名だ。
 今年3月には、インドで建設される新たな州都のマスタープランを選ぶ国際招待コンペに優勝し世界的な話題となった。
 2014年には、当時進行中の新国立競技場の建設計画について発言。観客席の上部だけに屋根を設けて、内部に子どもスポーツ施設を併設するコンセプトを提案するなど、近年は社会的発言も積極的に行っている。
 6月8日、会場の4号館435号教室は、このような槇氏の講演を聴こうと集まった約350人の学生たちで超満員。
 そんな学生たちに槇氏はヒルサイドテラスなどの作品を例に挙げながら「都市に人の居場所を作る」という自分の設計思想を語りかけた。それは要約すれば「都市には人々が連れ立って集う場所と、独りで行って孤独に過ごせる場所を用意しておく必要がある。ただし、それを別々に設ける必要はない」――。
 「設計がうまくいかない時、先生はどうされますか?」。講演後、会場から出たこんな質問には「苦しみます。私は今でも苦しみながら設計をしています」。
 会場にほっとしたような空気が流れた。
モデレーターを務めた今村創平准教授の話
 実は私も槇先生への質問をいくつも用意していたのですが、学生諸君の手が次々に挙がって、結局私の出番はなし。うれしい誤算でした。


槇文彦(まきふみひこ)建築家。1928年東京都生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、ハーヴァード大学大学院デザイン学部修士課程修了。その後ワシントン大学、ハーヴァード大学、東京大学で教壇に立つ。現在、槇総合計画事務所代表。日本建築学会賞、高松宮殿下記念世界文化賞、プリツカー賞、AIA(アメリカ建築家協会)ゴールドメダルほか受賞多数。文化功労者(2013年)